Virtual Reality
VRはコンピュータが作り出した情報を人間に提示して、それを人間が認識し行動に移すので、系の中に必ず人間がはいっていることが特徴と言えます。コンピュータが作り出した情報を元に人間の行動が起こってようやくインタラクションが成り立ちます。
人間には五感(視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚)があると言われてますが、細かく分けると痛覚や平衡感覚、振動覚などなど20種類以上あると言われてます。ここではVRで用いられている感覚とその提示について述べます。
視覚
人間が立体視を行うためには左右の目で対象物を見て、両眼の視差によって奥行きを知覚することができます。HMDや液晶シャッターメガネ・偏光メガネ(映画館で3Dを見るメガネ)などのデバイスはこの両眼視差によって立体感を提示しています。
立体感を得るためには両眼視差だけに限らず、観察者が動く、もしくは対象物が動くことで視差が生じて立体や空間を認識することもできます。空間の広がりを表現するために絵画では、遠くの物体は薄くディテールははっきりと描きません。同じようにVRでは遠くのオブジェクトはポリゴン数を減らして描画したり(LOD:Level Of Detail)、複数の遠景画をテクスチャマップしたり、霧を描画することでVR空間の広がりを演出します。
聴覚
立体音も左右の耳に届く音の差によって認識できます。つまり音源と左右の耳までの距離の差によって音源位置を特定します。これを頭部伝達関数(HRTF:Head Related Transfer Function)といいます。VRで立体音響を提示するためには一般的なステレオ音源では不十分なので、HRTFによって音源位置をコンピュータ内で再計算させて提示させなくてはなりません。その際にはヘッドフォンが最適となります。ヘッドフォンを用いなくても映画館みたいに部屋にたくさんのスピーカを配置すれば立体音響はできますがコストがかかります。
触覚
VRの空間はCGで描かれた空間なので物体(実体)がありません。よって目にみえてもその物体を触ったり握ることはできません。VR空間で触覚を提示するために特殊なデバイスが別途必要となります。触覚を提示するために、筋肉や指先に微弱電流を流して触覚を提示する方法や、振動素子を活用するデバイス、小さな風船を手袋の内側に多数埋め込むタイプなど様々な手法が研究されています。しかし、いずれも装置が複雑化・大型化するので実用には未だ先かもしれません。現時点では偏心モータ(重心が軸からずれたおもりをモータの先に取り付けたデバイス)を使って、振動で「触ったよ」と知らせたり力覚を提示するデバイスが用いられています。
体性感覚
VRの課題の一つして「VR酔い」が挙げられます。これは視覚と体性感覚のズレによって生じると言われています。HMDをかぶってVR空間を移動した場合、視覚は「移動しているよ」と脳に伝えますが、立ったままなので体の感覚(筋肉や三半規管など)は「え?動いてないよ」となります。このズレが良いの原因と考えられてます。子供が車酔いし易いのも同じことといえます(大人になるとなれてくるので酔わなくなります)。
VRはHMDによる視覚提示が注目されていますが、より質の高いVR空間(実空間に限りなく近いと感じつVR空間)を作るためには人間の感覚や認知についてもよく知っていなければなりません。以前はよく「VRで人間の脳を騙す」といっていましたが、現代は「脳に現実と認めてもらう」様に心がける必要があるのかもしれません。。